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涅槃図のお話

涅槃図

2月15日に涅槃会(お釈迦様の命日)は終わりましたが、当山では2月いっぱい「涅槃図」を掛けています。
今回はこの涅槃図の絵解きをしていきたいと思います。

天蓋

涅槃図全体

大きさは、縦200㎝横120㎝ほどの大きな掛軸です。
真ん中にはお釈迦様が描かれ、亡くなられて事を知った人間や動物たちが集まり悲しんでいます。

涅槃図2

お釈迦様

真ん中に描かれている方がお釈迦様です。
台の上に頭を北向きにして、右手を枕に足を緩やかに曲げて寝ておられます。
この頭を北に向けられていることから「北枕」にたとえられますが、北枕は決して縁起が悪いのではなく尊い方の寝姿です。
そして、右手を枕にしていますので、心臓は上にあり身体を緩やかに曲げています。
この姿勢は現代でも寝るのに適しているといわれています。

お釈迦様

摩耶夫人

画面向かって右上には摩耶夫人(まやぶじん)が描かれています。
摩耶夫人はお釈迦様のお母様で、お釈迦様の生後7日後になくなったと伝えられています。
お釈迦様が亡くなった事を聞いて阿那律尊者の先導で地上におりて来られました。

摩耶夫人

阿那律尊者

摩耶夫人の先導をしている方が阿那律尊者(あなりつそんじゃ)です。
お釈迦様の十大弟子の一人で、お釈迦様の説法中に居眠りをしてしまったため「もう絶対に寝ない」との誓いをたて、その結果目が見えなくなってしまいました。
しかし智慧の目が開き「天眼第一」といわれました。

阿南尊者

画面中央少し下で地面に突っ伏している方が阿南尊者(あなんそんじゃ)です。
お釈迦様が亡くなられたのを嘆き悲しみ卒倒してしまったといわれています。
阿南尊者はお釈迦様の従者を二十五年務めていて、多くの説法を聞き記憶したので「多聞第一」といわれています。

阿南尊者

おばあさん

画面中央右にお釈迦様の足をさするおばあさんの姿が書かれています。
このおばあさんは、毘舎離(バイシャリー)城に住んでいるおばあさんということです。
等々方の足をさすって敬意を表しています。

ばあさん

サイ

画面左下の一番左にいる小さい動物は「サイ」だといわれています。
当時の絵師はサイを見たことがなかったのでしょう、甲羅のような者で身を包んでいる動物と聞き、このように描いたのでしょうか。

サイ

頭陀袋

画面左上の沙羅双樹に頭陀袋が引っかかっています。
この袋には薬が入っていて、摩耶夫人がお釈迦様のために薬を入れた袋を投げたといわれています。
しかし投げた袋は沙羅双樹に引っかかりお釈迦様には届かなかったといわれています。
また、薬を投げいれたという故事から「投薬」という言葉が生まれたとされています。

頭陀袋1

沙羅双樹

画面中央に沙羅双樹(さらそうじゅ)木が描かれています。
左に四本、右に四本描かれ、右四本は白く枯れてしまっています。
これは植物でさえもお釈迦様に入滅を悲しみ枯れてしまった事を示しています。
左四本は青々と茂り花を咲かせています、こちらはお釈迦様の教えの永遠性を説いています。
絵によってはあおい沙羅双樹と白い沙羅双樹が交互に描かれているものもあり、これが鯨幕のルーツといわれています。

沙羅双樹

画面中央上に満月が描かれています。
旧暦では満月はその月の15日を指します。
お釈迦様が亡くなったのは2月の満月の日ですので涅槃会は2月15日になりました。

お釈迦様が亡くなったことを多くの神仏や人間そして動物が集まり、植物のような自然までも嘆き悲しんでいる図が「涅槃図」ですが、どこを見ても猫の姿はありません。
実は、先ほどお話しした木に引っかかった頭陀袋に関係しているようです。
木に引っかかった頭陀袋をネズミが取りに行こうとしたところ、猫が追っかけ回してネズミは袋を取ることができず、猫は画面からフェードアウトしてしまいた。
ですから猫は描かれていません。
しかし絵師によっては猫を描かれています。
今も昔も猫好きは多いようですね。

最後に

涅槃図には、このほかにも沢山絵解きの楽しみがありますが、今回はここまで。
またの機会にご紹介致します。
※涅槃図については諸説あります。